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独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター

診療内容

当センターの呼吸器外科では肺や縦隔、胸壁などの疾患に対して外科治療を行っています。3人の呼吸器外科医が呼吸器内科医、放射線治療医と協力して、チーム医療を基本とし診療を行っています。治療対象となる主な疾患には、肺がん、気胸、膿胸、肋骨骨折などの胸部外傷、胸腺腫などの縦郭腫瘍、胸膜中皮腫があります。また、限られた患者さんではありますが、転移性肺腫瘍(他臓器原発のがんが肺に転移したもの)を外科治療することもあります。当センターは呼吸器外科基幹施設として認定されていて、年間約110例前後の呼吸器外科手術を行っています。患者さんの早期社会復帰を目指して、体に負担の少ない低侵襲な胸腔鏡手術を基本としております。外科治療の後に追加して薬の治療(抗がん剤など)や放射線の治療が必要な場合にも、引き続き呼吸器外科医が治療にあたることがあります。

診療実績

原発性肺癌 転移性肺腫瘍 気胸 縦隔腫瘍 膿胸 その他
1996 6 2 2 9 1 7 27
1997 35 2 16 10 5 17 85
1998 41 4 21 4 10 16 96
1999 36 4 20 2 1 22 88
2000 24 3 14 0 7 13 61
2001 35 10 23 8 6 28 110
2002 40 7 28 5 2 20 102
2003 48 12 40 3 4 19 126
2004 59 9 66 3 9 14 160
2005 45 11 60 10 3 13 142
2006 52 4 36 2 6 12 112
2007 63 9 24 1 3 5 105
2008 56 4 16 4 5 6 91
2009 60 12 31 4 2 9 118
2010 65 8 27 3 1 8 112
2011 70 4 25 3 2 11 115
2012 66 11 22 8 3 12 122
2013 58 2 20 12 3 16 111
2014 44 6 24 8 2 14 98
2015 67 16 23 8 3 9 126
2016 46 7 22 5 3 13 96
2017 57 5 27 9 5 14 117

肺がんの診療

すでに皆さんもご存知の様に、肺がんは日本人のがんによる死亡原因の1位を占めています。そのため、肺がんと聞くと予後が悪く助からないがんであるとの認識の方も多いかと思われます。予後が悪い第1の原因は、ほとんどの場合かなり進行しないと症状が発現しないことです。

しかし、近年胸部CT検診が長野県各地で導入され、早い段階で発見される症例も多く認められます。それらの患者さんは外科治療により多くの方が治っています。現在喫煙されている方もしくは過去に喫煙された方は、少なくとも年1回の胸部レントゲンあるいは胸部CTの検診の受診をお勧めします(参考資料#1)。また、タバコを吸わない方も肺がん(特に高分化腺がん)に罹患することがありますので、年1回の胸部レントゲンあるいは3年毎の胸部CTの検診の受診をお勧めします。

肺がん手術症例の受診契機別症例数(2009~2017年手術例)

自覚症状で
受診
肺がんCT検診 肺がんX線検診 他疾患治療中の
CT
他疾患治療中の
X線
その他
2009年 13 20 13 9 4 1
2010年 10 20 14 15 5 1
2011年 8 31 7 17 6 1
2012年 11 14 13 22 5 1
2013年 7 12 12 23 3 1
2014年 9 11 7 12 3 2
2015年 11 23 6 16 8 3
2016年 9 16 8 9 2 2
2017年 5 14 16 20 1 1

近年、ご高齢の方の肺がんも増えてきました。当センターではご高齢の方でも自立した生活が長期間続けられるように、胸腔鏡による内視鏡手術や部分切除・区域切除などの肺の切除範囲を縮小した低侵襲な手術を積極的に行っています。

肺がん手術症例 年齢(1996~2017年: 最年少21歳~最高齢89歳)

年齢 症例数
20~29 1例 0.10%
30~39 5例 0.48%
40~49 39例 3.71%
50~59 139例 13.21%
60~69 320例 30.42%
70~79 417例 39.64%
80~ 131例 12.45%

肺がん年次別術式内訳 ( )内は胸腔鏡手術症例数

部分切除 区域切除 葉切除 肺全摘除
2009 8 (2) 4 (0) 42 (0) 2 (0)
2010 3 (3) 8 (0) 51 (0) 0 (0)
2011 9 (8) 9 (6) 52 (18) 0 (0)
2012 12 (12) 4 (2) 46 (33) 1 (0)
2013 13 (12) 7 (6) 38 (28) 0 (0)
2014 8 (7) 9 (9) 27 (21) 0 (0)
2015 7 (7) 13 (13) 44 (38) 0 (0)
2016 9 (9) 9 (9) 27 (23) 1 (0)
2017 10 (10) 8 (8) 39 (33) 0 (0)

転移性肺腫瘍の診療

肺以外のさまざまな臓器の悪性腫瘍(がん、肉腫)が肺に転移を来した病態です。原発部位(初めに出来たがん)の治療がすでに終わっていて、肺の病変を完全に切除可能な場合は積極的な外科治療を行っています。当院では現在まで20種類の悪性腫瘍の肺転移例の手術を経験しています。症例数を見ると、大腸(結腸と直腸)がんの肺転移例の手術が圧倒的に多く、以下乳がん、腎細胞がん、胃がんの順です。手術後は、再度紹介医に戻っていただきます。多くの場合はそれぞれのがんに効果のある薬の追加治療が必要です。当院では転移性肺腫瘍に対しても積極的に胸腔鏡手術を行っています(参考資料#2)。

転移性肺腫瘍手術例の原発部位(1996~2017年手術例)

原発 症例数
大腸(結腸・直腸)がん 80
乳がん 10
腎細胞がん 9
胃がん 6
子宮肉腫 3
膵臓がん 2
骨肉腫 2
肝細胞がん 2
子宮体がん 4
軟部肉腫 3
その他(再発肺がん含む) 31

気胸の診療

気胸とは肺の表面に穴が開き肺内の空気が胸腔内に漏れて肺が縮んでしまう病態です。症状としては呼吸困難や胸痛が出現します。気胸の中には、若年者(10代から30代の男性に多い)に発症する原発性気胸(狭義の自然気胸)と肺気腫、結核等の肺疾患のある高齢者に発症する続発性気胸があります。

原発性気胸

原因はブラおよびブレブと呼ばれる表面が薄くなった風船状の病変(気腫性嚢胞)が自然に破裂することで発症します。ほとんどの症例は胸腔鏡下に小さい創で自動縫合器を使っての肺部分切除、あるいは縫縮する治療で治ります。以前は、初回発症時は胸腔内に管を挿入して吸引し手術を施行せず保存的に治療し、再発した場合は手術の方針というのが一般的でしたが、現在はCTで明らかな病変が認められた場合は初回発症でも多くの場合、手術をお勧めしています。ほとんどの症例では術後3~5日程度で退院が可能です。ブラが多数存在している方や喫煙を続けている方では術後の再発も起こり、術後の再発率は5~15%と言われています。再手術の術式は当院では、ほとんどの症例で肺の切除は行わず、胸腔鏡下に病変部を縫合する方法をとっています。また、微小なブラに対しては、低温で焼灼し、吸収性のシートで肺表面を被覆するという方法もとっています。

40歳未満原発性気胸(自然気胸)手術例と再発率(1996年~2017年)

症例数
初回手術症例数 245例(男性208例、女性37例)
手術件数 274例(両側症例12例)
術後再発症例数 30例(術後再発率:10.9%)
再手術件数 45例(他院初回手術例16例を含む)
続発性気胸

肺気腫や肺結核らの肺疾患に続発する気胸は高齢者がほとんどで、肺全体に及ぶ病変を認め、さらに元々の肺疾患のため呼吸機能が低下しております。そのため、はじめは胸腔内に管を挿入し保存的治療を行います。しかし、保存的治療で軽快しない症例や再発症例に対しては可能であれば外科治療を行います(参考資料#3)。全身状態や呼吸機能が悪く、全身麻酔が困難な方に対しては、胸腔内に薬剤等を注入する胸膜癒着術を行います。

続発性気胸に対する治療法別症例数(2009~2017年)

胸腔ドレナージのみ 薬剤注入による
胸膜癒着療法
気管支鏡での
気管支塞栓術
外科治療による
肺瘻閉鎖術
症例数 60 15 1 97

縦郭腫瘍の診療

心臓、血管、気管および食道の周囲の胸部に発生した腫瘍を縦隔腫瘍と言います。良性腫瘍もあり、増大するかどうか経過を見ることもありますが、外科治療が必要な腫瘍も多くあります。もっとも頻度が高い腫瘍は胸骨と心臓の間に発生する胸腺腫です。ほとんどの場合は手術適応で、進行すると術後に放射線照射が必要です。近年、縦隔腫瘍に対する外科治療でも患者さんの体の負担を少なくするため、鏡視下手術が取り入られるようになってきました。当院では早期の胸腺腫や神経原性腫瘍などに対して積極的に胸腔鏡手術を行っています(参考資料#4)。

縦隔腫瘍の腫瘍別症例数(2009~2017年手術例、( )内は胸腔鏡手術)

症例数
胸腺腫 30 (19)
胸腺腫以外の胸腺腫瘍 17 (16)
その他の縦隔腫瘍 13 (13)

膿胸の診療

肺の炎症(肺炎)が肺表面の胸膜に達して肺外の胸腔内に波及し、胸腔内に胸水(感染性の胸水で膿状の事もあり)が貯まった病態です。胸腔内に管を挿入し、抗生物質の投与を行っても胸の中の水が減少しない場合、あるいは炎症所見の軽快が認められない場合は、胸の中をきれいにする外科治療(胸腔内掻爬、醸膿胸膜・胸膜胼胝切除術)が必要です。

膿胸の術識別の症例数(2009~2017年手術例、( )内は胸腔鏡手術)

症例数
膿胸腔掻爬 10 (10)
醸膿胸膜・胸膜胼胝切除 8 (5)
膿胸腔有茎筋肉弁充填 2 (0)
開窓 4 (0)

診療体制

常勤の呼吸器外科医3名によるチーム医療を行っています。外来は呼吸器外科専門医2名が毎日交代で午前・午後と診療を行っています。手術日は原則、水曜日と金曜日です。入院患者さんの診療(回診)は、平日は午前・午後の2回、土日は午前1回行います。また、気胸や肋骨骨折などへの緊急対応は、夜間や休日でも呼吸器外科医が対応できるように体制を整えております。

その他

当センターでは、小さな肺がんを安全に切除するため、全国に先駆けて術中超音波診断装置を用いて肺部分切除や区域切除などの外科治療を行っています(参考資料#5)。

また、国立病院機構ネットワーク研究機構(NHO)、北東日本研究機構(NRJ)、胸部腫瘍臨床研究機構(TORG)、信州大学研究グループなどに参加し、呼吸器疾患に対するより良い治療法の研究に協力しています。革新的な新しい治療法に適応がありそうな患者さんには治験へのご参加をご案内させていただくこともあります。

当センターは、日本肺癌学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内視鏡学会の4学会が合同で運営する肺癌登録合同委員会主催の、第7次事業:2010年肺癌手術症例の全国登録調査に協力しています。登録症例の解析結果をもとに、最新の肺癌治療成績を把握し、今後の肺癌診療に活かしていく予定です。研究計画書は、事務局である大阪大学 呼吸器外科学のホームページにも掲載されていますので、必要な場合はご確認ください。個人情報の管理は厳重にしておりますので、ご理解お願いします。

参考文献

(太字は当院医師)

#1

  1. Kondo R, Yoshida K, Kawakami S, Shiina T, Kurai M, Takasuna K, Yamamoto H, Koizumi T, Honda T, Kubo K.. Different efficacy of CT screening for lung cancer according to histological type: Analysis of Japanese-smoker cases detected using a low-dose CT screen. Lung Cancer. Vol 74, No 3, 433-440. 2011.
  2. Kondo R, Yoshida K, Kawakami S, Shiina T, Kurai M, Takasuna K, Yamamoto H, Koizumi T, Honda T, Kubo K.. Efficacy of CT screening for lung cancer in never-smokers: Analysis of Japanese cases detected using a low-dose CT screen. Lung Cancer. Vol 74, No 3, 426-432, 2011.
  3. Sone S, Nakayama T, Honda T, Tsushima K, Li F, Haniuda M, Takahashi Y, Hanaoka T, Takayama F, Koizumi T, Kubo K, Yamanda T, Kondo R, Fushimi H, Suzuki T. CT findings of early-stage small cell lung cancer in a low-dose CT screening programme. Lung Cancer Vol 56, p207-215, 2007.
  4. Sone S, Nakayama T, Honda T, Tsushima K, Li F, Haniuda M, Takahashi Y, Suzuki T, Yamanda T, Kondo R, Hanaoka T, Takayama F, Kubo K, Fushimi H. Long-term follow-up study of a population-based 1996-1998 mass screening programme for lung cancer using mobile low-dose spiral computed tomography. Lung Cancer Vol 58, p329-341, 2007.
  5. Sone S, Matsumoto T, Honda T, Tsushima K, Takayama F, Hanaoka T, Kondo R, Haniuda M. HRCT features of small peripheral lung carcinomas detected in a low-dose CT screening program. Academic Radiology Vol 17, No.1, p75-83, 2010.
  6. Sone S, Tsushima K, Yoshida K, Hamanaka K, Hanaoka T, Kondo R. Pulmonary nodules: Preliminary experience with semiautomated volumetric evaluation by CT stratum. Acad Radiol. Vol 17, No 7, p900-911, 2010.
  7. Sone S, Hanaoka T, Ogata H, Takayama F, Watanabe T, Haniuda M, Kaneko K, Kondo R, Yoshida K, Honda T. Small peripheral lung carcinomas with five-year post-surgical follow-up: assessment by semi-automated volumetric measurement of tumour size, CT value and growth rate on TSCT. Eur Radiol. Vol 22, No 1, p104-119, 2012.
  8. Eguchi T, Kondo R, Kawakami S, Matsushita M, Yoshizawa A, Hara D, Matsuoka S, Takeda T, Miura K, Agatsuma H, Sakaizawa T, Tominaga Y, Saito G, Toishi M, Hamanaka K, Hashizume M, Shiina T, Amano J, Koizumi T, Yoshida K. Computed tomography attenuation predicts the growth of pure ground-glass nodules. Lung Cancer. Vol 84, No 3, p242-247, 2014.
  9. Sone S, Kondo R, Ishii K, Honda T, Yoshida K, Hanaoka T, Yoshizawa A. Performance of low-dose CT screening for detecting lung cancer at the early stage and the estimated tumor growth rate according to the smoking status/age. Japanese Journal of Lung Cancer. Vol 54, No 7, p937-946, 2014.

#2

  1. 近藤竜一、兵庫谷章、濱中一敏、藏井 誠、吉田和夫、天野純:転移性肺腫瘍手術例の検討. 日臨外会誌 第67巻 第11号 第2533頁~第2538頁. 2006.
  2. Kondo R, Hamanaka K, Kawakami S, Eguchi T, Saito G, Hyougotani A, Shiina T, Kurai M, Yoshida K.. Benefits of video-assisted thoracic surgery for repeated pulmonary metastasectomy. Gen Thorac Cardiovasc Surg. Vol 58, No.10, p516-523, 2010.

#3

  1. Miura K, Kondo R, Kitaguchi Y. Outcome of Surgically Treated Pneumothorax in Patients with Interstitial Pneumonia. Shinsu Med J Vol 65. No3. P163-170, 2017.

#4

  1. 藏井 誠山田響子近藤竜一:前縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術の工夫―前胸部皮下吊り上げによる胸骨挙上法―. 胸部外科 第65巻 第11号 第973頁~第977頁. 2012.

#5

  1. Kondo R, Yoshida K, Hamanaka K, Hashizume M, Ushiyama T, Hyogotani A, Kurai M, Kawakami S, Fukushima M, Amano J. Intraoperative ultrasonographic localization of pulmonary ground glass-opacities. J Thorac Cardiovasc Surg Vol 138, No.4, p837-842, 2009.

スタッフ